遺産(相続財産)から「葬儀費用」を支払った後でも相続放棄ができるのか?

遺産(相続財産)から「葬儀費用」を支払った後でも相続放棄はできる?

前回の記事では、相続放棄しても受け取れるものとして、葬祭費、埋葬料について書いてみました。
今回は、遺産(相続財産)から「葬儀費用」を支払った後でも相続放棄ができるか、について記事にしてみたいと思います。

「葬儀費用」とは?

葬儀費用とは、葬儀や火葬にかかる費用だけでなく、お通夜の費用、遺体の運搬費、お布施や読経料、参列者にふるまう飲食費に支払うお金のことをいいます。

※四十九日や一周忌等の法要にかかる費用や香典返しや喪服代は葬儀費用に含まれないと考えています。

「葬儀費用」は遺産(相続財産)にあたる?

葬儀費用は亡くなったあとに発生する費用(負債)なので,死亡時の財産(負債)ではなく遺産(相続財産)ではないと考えられています。

余談ですが、税法上、葬儀費用は債務控除の対象なので、相続税を計算する際には相続財産から控除されます。
つまり、葬式費用は相続税の課税がされないので、葬式費用をうまく使いこなせば、相続税の支払いを下げることができるのです。

相続放棄をせずに相続財産を引き継ぐと決められた方は、税理士等の専門家の無料相談を活用し、税法上何が葬儀費用に当たるかの判断をすることをオススメ致します。
当センターにて税理士の先生を紹介することも可能ですので、知り合いの税理士の先生がいらっしゃらない場合は、お申し付けください。

葬儀費用を遺産(相続財産)から支払った場合でも相続放棄できる?

葬儀費用については、下級審の判例(東京控判昭11年9月21日新聞4059号13頁)ですが、「身分に相応しい程度の葬儀」であれば、その費用を遺産(相続財産)から支払うことは「道義上必然」であり、単純承認にならないとしています。

また、抗告審決定(大阪高決平成14年7月3日家庭裁判月報55巻1号82頁)で、
【葬儀は、人生最後の儀式として執り行われるものであり、社会的儀式として必要性が高いものである。そして、その時期を予想することは困難であり、葬儀を執り行うためには、必ず相当額の支出を伴うものである。これらの点からすれば、被相続人に相続財産があるときは、それをもって被相続人の葬儀費用に充当しても社会的見地から不当なものとはいえない
また、相続財産があるにもかかわらず、これを使用することが許されず、相続人らに資力がないため被相続人の葬儀を執り行うことができないとすれば、むしろ非常識な結果と言わざるをえないものである。】
と判断された事例があります。

つまり、葬儀費用が妥当な額であるなら、葬儀代を遺産(相続財産)から支払っても相続放棄の申述は受理されると考えられます
しかし、不相当に高額か否かは具体的な状況で判断しなければならないと考えられます。

※葬儀代の領収書については、保管しておくと後々のトラブル防止にも役立ちますので必ず貰っておきましょう。

今回は、遺産(相続財産)から「葬儀費用」を支払った後でも相続放棄ができるか、について記事にしてみました。
次回は、相続放棄をしても受け取れるものとして「形見分け」について記事にしていこうと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。