相続放棄ができる期限はある?期間はいつまで?(1)
前回の記事では、被相続人の遺産について、相続人ができる3つの選択肢のうち「限定承認」について書いてみました。
今回は、「相続放棄ができる期限はある?期間はいつまで?(1)」について記事にしてみたいと思います。
まずは、相続放棄とはどういうものなのか確認してみたいと思います。
「相続放棄」とは?
相続放棄とは、相続財産のすべてを放棄することを選択できる制度のことです。
民法では、原則として、人が亡くなったときは、その相続開始のときから被相続人の財産に属した一切の権利義務を相続人が承継するものと定められています。(民法896条)
もっとも、相続人にとって、被相続人の権利義務を承継することが常に望ましいとは限りません。
この「被相続人の財産に属した一切の権利義務」にはマイナスの財産(借金)も含まれます。
「資産に比べ明らかに大きな負債がある」ことを理由に被相続人の権利義務を承継することを希望しない相続人もいます。
また、「相続人間の争いに巻き込まれたくない」ことを理由に被相続人の権利義務を承継することを希望しない相続人もいます。
このような様々な事情のために、相続放棄という制度が用意されているのです。
では、相続放棄には期間の制限(期限)はあるのでしょうか?
相続放棄には期間の制限(期限)はある?
相続放棄ができる期間(期限)は、民法で規定されています。
【民法915条1項本文】
「相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、相続放棄をしなければならない」。
この3か月の期間のことを熟慮期間といいます。
熟慮期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかったときは、相続人は単純承認をしたものとみなされることになり(民法921条2号)、「被相続人の財産に属した一切の権利義務」を承継することになります。
すなわち、相続の放棄をしようとする者は、熟慮期間内にその旨を家庭裁判所に申述しなければなりません。(民法938条)、
また、この申述の受理は、審判事項であり(家事事件手続法39条、別表第1の95の項)、申述受理の審判によって相続の放棄が成立し、その効力が生ずることとなります。
蛇足ですが、却下の審判に対しては即時抗告ができますが(家事事件手続法201条9項3号)、受理の審判に対しては不服申立ての途はありません。
つまり、原則、相続放棄をしようとする者は、相続の開始を知ったときから3か月以内に家庭裁判所において相続放棄の申述をし、受理される必要があるということです。
そこで、民法915条1項本文に規定する3ヶ月の期間の起算点である「自己のために相続の開始があったことを知った時」とは、具体的にいつになるのか、というのが重要な問題になってきます。
次回は、相続放棄ができる期限はある?期間はいつまで?(2)と題して、「自己のために相続の開始があったことを知った時」とはいつなのか?から記事にしていきたいと思います。
どうぞよろしくお願い致します。