相続放棄者の管理義務について(1)

相続放棄者の管理義務について(1)

今回は、「相続放棄者の管理義務について(1)」と題して、そもそも相続放棄とは?という根本的なことから記事にしていきたいと思います。

相続放棄とは?(そもそも)

・相続放棄は、はじめから相続人ではなかったものとみなす絶対的な効果を持つ制度です。
その効果は絶対的ですので、条件や期限をつけることはできません。
※条件や期限とは、法律行為の効力が生じたり生じなくなったりする転換点となるものです。
なので、相続放棄に転換点をつけて、相続放棄の効力が生じたり生じなくなったりすることはできないということになります。
※相続放棄の効果は絶対的なものなので、弊所としては、他事務所の相続放棄のお手続きより、厳格に御本人様確認の資料の御提供をお願いしております。
※他人に勝手に相続放棄の申述がされてしまうことを防ぐためです。

相続放棄の方法は?

相続放棄は、相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に(民法915条1項本文)、家庭裁判所に相続放棄をする旨の申述をすることによってします。(民法938条)
「申述」とは、戸籍などをつけて申述書を家庭裁判所に提出することをいいます。
財産目録の作成や提出は必要ありません。
また、相続人が数人いる場合でも、各相続人ごとに、各自単独で相続放棄の申述をすることができます。

相続放棄をした者の注意義務とは?

相続放棄者の管理義務の不明確さ(旧法の規律とその問題点)

旧民法では、相続放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産(空き家等)の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならないとされていました。(改正前民法940条1項)
もっとも、下記のような場合等における相続放棄者の義務の有無及び内容等が必ずしも明確ではありませんでした。

相続放棄者の保存義務の明確化(改正法の規律)

改正民法では、相続放棄をした者が、
➀その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、
➁相続人又は民法952条1項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、
➂自己の財産におけるのと同一の注意をもって
➃その財産を保存しなければならない
と規定されました。

相続放棄者の相続財産の管理義務の見直しについて

このように、旧民法では、相続放棄者の相続財産の管理義務について、発生要件や義務の内容等が不明確であったため、改正民法では、➀放棄時に現に占有している相続財産について、➁相続人等に引き渡すまでの間、③自己の財産におけるのと同一の注意をもって、➃保存する義務、がある旨の規律が設けられました。

次回は、「相続放棄者の管理義務について(2)」と題して、新しく設けられた規定についてもう少し深堀する記事にしていきたいと思います。

どうぞよろしくお願い致します。