相続放棄をした後の撤回や取消しの主張4
前回の記事では、どのような場合に相続放棄の効力をあとから否定する「撤回」「取消し」ができるのかについて記事にしました。
今回は、相続放棄の相続放棄の申述の時点で、意思表示に問題があった場合に、必ず相続放棄委の取消しができるかどうかを記事にしてみたいと思います。
相続放棄の取消しはいつでもできるのか?(期間制限)
相続放棄の取消手続きを行うには、「追認をすることができる時から6か月」ないし「相続放棄の時から10年」以内に(民法919条3項)、相続放棄取消申述書などの必要書類を家庭裁判所に提出する手続が必要となります。
まず、相続放棄の取消しの場面では上記のような期間制限があります。
それでは、期間制限内に相続放棄の取消の申述書を裁判所に提出すれば、必ず相続放棄の取消が認められるのでしょうか?
相続放棄の取消の申述書を裁判所に提出すれば、必ず相続放棄の取消が認められる?
先に述べた期間制限に加えて、相続放棄の取消しの申述書の提出の際には、取消原因があったことを証する書面の提出が求められます。
通常は、このような証拠等を保管していることは稀であり、また、何らかの証拠があったとしても、相続放棄を行う意思決定過程において、取消が認められる程度の重大な影響があったことを立証することが求められます。
このような理由から、一般的に相続放棄の取消しを立証することは困難と説明されています。
すべての取消原因で立証は困難なのか?
前回の記事「相続放棄をした後の撤回や取消しの主張3」で紹介した下記の取消原因は、裁判所もチェックしきれていなかったというとても稀なケースです。
・未成年者が法定代理人の同意を得ずに相続放棄した場合
・成年被後見人本人が相続放棄した場合
・後見監督人がいるのに、被後見人もしくは後見人が後見監督人の同意を得ずに相続放棄した場合
・被保佐人が保佐人の同意を得ずに相続放棄した場合
このような事が理由で、相続放棄の取消が問題となることはほとんどありません。
この場合、そもそも相続放棄が受理されないからです。
上記とは別に、
・詐欺または脅迫によって相続放棄させられた場合
・錯誤に基づて相続放棄をした場合
が、相続放棄の取消で問題になると言えます。
これらの原因の場合、裁判所のチェックが及ばないからです。
また、詐欺、脅迫、錯誤の場合は立証が容易ではないという問題があります。
ただし、容易ではないですが、立証することは可能であると考えます。
専門家に相続放棄の申述を依頼した場合、依頼を受けた専門家は、相続放棄をすると決めるに至った経緯を聴取しますし、その記録も保存します。
何かしらの資料があれば、当該資料も保存します。
さらに、相続放棄の申述の際には、理由(動機)を記載します。
これらの資料が、後の相続放棄の取消の証拠等になるのです。
相続放棄の取消原因等により、立証が困難な場合もありますが、重要な事は最初の相続放棄の申述の際に資料を保存しておくことだと当センターは考えます。
「相続放棄は取消すことは実際にはほとんど不可能です。」とのインターネット上の文言を鵜吞みにして諦めるのではなく、
多数の専門家に相談することをおすすめ致します。